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更新日:2010年7月13日
「企業から消費者へのコミュニケーション手段は何がありますか?」
このような質問をすれば、すぐに戻ってくる答えは大概「広告」というものです。
確かに、「広告」が、企業の対外コミュニケーションの主な手段です。しかし、もう少し考えれば、広告だけではないことにすぐ気が付くでしょう。例えば、「お店の従業員や営業マンの接客態度」、「製品や価格そのもの自体」、「販売する場所や陳列方法」などなど、答えが次から次へと出てきます。
そして、もう少し気の利く人ならすぐに問題に気づくでしょう。つまり、企業が広告で言っていることと、流通段階や消費者が商品を実際に使っている場面から得た体験との間に、多くの場合「ギャップ」が存在することです。
では、なぜこのような「ギャップ」が発生するのでしょうか。
その原因は大きく2つ考えられます。
1つは、「広告の性質上」どうしても避けられない原因です。それは、広告のもつ「誇大」的な側面です。広告は、広告媒体を通じて、消費者に間接的にメッセージを訴える手段です。そして、広告制作者の意図により、表現内容も派手に展開されることが多く、そのため広告で語られている理想と商品にまつわる客観的な現実との間のギャップが自然に生まれてきます。
もう1つの原因は、広告とそれ以外のさまざまなマーケティング手段との一貫性の問題です。例えば、広告では高級感を懸命に訴えているにもかかわらず、商品のデザインが粗悪であったり、販売する時点で値引きばかりしたりすると、広告のメッセージと実際に体感したイメージとの整合性がとれなくなります。
後者のこの整合性の問題に関して、多くの研究がなされてきました。一番代表的なものは「統合的マーケティングコミュニケーション(IMC)」の研究です。しかし、統合といっても、それは単にメッセージやデザインの内容を同じ方向にそろえれば終わるのではありません。むしろ、どのタイミングでどのような行動をとる、という形式の側面にも気を配る必要があります。この点について、次のケースを紹介して、理解を深めたいと思います。
「消費者は神様だ」と信奉している日本では、企業はとにかくよく消費者に対し頭を下げ謝ります。しかしながら謝ること自体が目的ではないことを考えると、その謝り方は意外と難しいものです。相手にお詫びの気持ちを伝え、許しを請うのですが、問題はこちらが謝っても、必ずしも相手が許してくれる保証はないということです。
では、その決め手は何かといえば、それは「誠意」です。ところで、「誠意」というごく抽象的なものを、どのように表現すればいいのか?この点を理解するために、まずは、実際に起きたこのケースを見てみましょう。
2005年の年末頃に、一日必ず数回「松下電器より心からのお願いです」と、女性の声で淡々と語る広告が流れました。これは2005年11月頃に松下電器が製造した古い年式の「FF式石油温風器」による死傷事故があり、それをきっかけに数種類の石油ヒーター製品の回収を呼びかけるためのものでした。家電業界にとって、まさに稼ぎ時である年末商戦のピークに、この事件が起きたのです。
もし、あなたが松下電器の当事者であれば、どのように対応しますか?
実際に、松下電器は次のように対応しました。まず年末商戦を後回しにして、12月10日からの10日間に計77時間の広告枠を買い、「お詫び広告」を訴え続けました。そして1000人の従業員を動員し、一台5万円の金額でその製品を回収していきました。
その後、2年が経とうとする現在でも、企業のトップページに、回収製品の年式型番、問い合わせ先、そして、フリーダイヤルやメールによる問い合わせの手段を掲載しています。(参照:http://panasonic.co.jp/)
今回の事件で松下電器は莫大な費用を投入しましたが、このような丁寧かつ考慮された対応によって、企業イメージの下落を食い止めたのみならず、逆に企業の好感度がアップし、2006年度の第一四半期に増収増益というよい結果に繋がりました。
このケースからもわかるように、「お詫び」あるいは他に何らかのメッセージを相手に伝える際、伝える内容はもちろん大切ですが、それ以上に誠意を見せることが大変重要です。
つまり相手に誠意を伝えるためには、単に言葉だけではなく、伝える姿勢、タイミング、そして他の行動との関連性をトータル的に考える必要があるのです。