楽しい時間は短く感じられる、と言われます。これは多くの人が実感でそう思っているというだけでなく、心理学や神経科学といった分野の知見でも説明できる事実だそうです。ですから、新入生の皆さんには、流通科学大学で楽しい大学生活を経験して4年間があっという間だった、と感じてもらえれば、われわれ教職員にとってもとても嬉しいことです。

ただ、4年という時間は世の中の常識や人々の価値観を、思いのほか変えてしまうほどの長さでもあります。今から4年前、皆さんはどのような状況に置かれていたか覚えていますか。日本でも新型コロナウィルス感染症の状況が深刻になり、政府が緊急事態宣言を発出した、というのが今から4年前、2020年の春でした。

この間に、われわれの認識や考え方、多くの人が「常識」と思うことがいくつも様変わりしました。知人に会うときや飲食店を利用するとき、相手がマスクをしたままでも特に違和感を持たなくなりました。実際に相手には会わずに、オンラインで大事な会議や商談をすませてしまうことも、当たり前になりました。コロナ禍の前には、そんなことが常識だとは多くの人が考えていなかったと思います。何より、映画やドラマの中のお話だと思っていたパンデミックという事態が、本当に自分の生きている世界で起こり大変なことをもたらすのだ、ということを世界中のすべての人が実体験しました。

同様に、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻も、世界を大きく変えた出来事と言えるでしょう。強大な軍事力を持つロシアが隣国への領土拡張を露骨に実行しようとし、侵攻されたウクライナを欧米の軍事同盟が支援するという、一歩誤れば恐ろしい世界大戦につながってしまいかねない状況が今も続いています。平和な世界がいつまでも続く、と何となく思っていた多くの人が、その考えを改めさせられました。また、ドローンやSNSといった楽しそうなものが、使い方によっては人の命を奪い国同士の関係も変えてしまう力を持っているのだ、ということも知らしめました。

ただ、そうしたコロナ禍や戦争といった悪いことだけでなく、ポジティブな方向に人々の認識を変えた出来事も、この4年の間にありました。アメリカ・大リーグのスーパースターになった大谷翔平選手です。2021年と23年に満票でMVPに選出された彼の偉業は、皆さんもよくご存じでしょう。フィジカル面で不利な日本人選手がホームラン王やMVPになるということや、投手でも野手でも活躍する二刀流というスタイルが実現することなどは、日本人だけでなくアメリカの人々でも、彼の活躍以前には誰も考えていなかったのではないでしょうか。

このように、嬉しいことも悲しいことも含め、4年という時間はわれわれの社会の有様や人々の認識を大きく変えてしまう長さなのです。今日から始まる皆さんの大学生活の4年間も、きっと多くの変化が皆さんの周囲で生じます。その中には、皆さんを含め多くの人々の生き方に大きな影響を与える変化もあると思います。

一方で、今日から始まる4年間で、皆さん自身もきっと大きく変わります。その変化の多くは、高校までの科目では学ばなかったような知の世界や、これまで周囲にはいなかったような考え方を持つ人との、新たな出会いによってもたらされるプラスの変化、成長だと思います。

私は、大学4年間の価値というのは、どれだけ自分が変わるのかというところにあると思っています。そして、皆さんが入学したこの流通科学大学では、そうした新たな出会いの機会をさまざまな形で用意しています。どれだけ自分の周辺や社会の状況が変化しても、自分自身の成長でそれを乗り越えることができるような学びを、ここにいる皆さんが経験できるように、われわれ教職員が全力でサポートします。皆さんは、ぜひ、このキャンパスで出来ることをフル活用してください。

4年後に、今日を振り返って「自分はけっこう変わったな」と思うことができれば、それが成長の証です。そのような日を迎えることができることを願いながら、私の挨拶とさせていただきます。本日は流通科学大学へのご入学、誠におめでとうございます。

入学後半年間の教育プログラム「なりたい自分発見カリキュラム」では、学部・学科を超えた仲間と多様なプログラムを経験することで、自分の「夢」や「なりたい自分」が何かを真剣に考えていただきたいと思います。

そして、見つけた「夢」や「なりたい自分」の実現に向けて、授業や課外活動に取り組んでください。「夢」や「なりたい自分」が見つかれば、大学生活をどう過ごすべきか何を学ぶべきかが見えてくるはずです。流通科学大学は皆さんが「なりたい自分」を実現するためのお手伝いをいたします。

これからの皆さんの大学生活が充実した素晴らしいものになることを願いまして、私からの祝辞とさせていただきます。