市の行政とは”実行部隊”。市長が語る『淡路市の地域経営』とは‥

市の行政とは”実行部隊”。市長が語る『淡路市の地域経営』とは‥

公開日:2019年11月6日

淡路市長

毎週、日本を代表する各業界の企業や官公庁のトップを講師に招き行っている【特別講義】。10月15日(火)は、淡路市の市長・門康彦氏を講師に招き、『市の行政の役割』や『淡路市の地域経営』についてお話しいただきました。

『市長、いつかきっと帰りたくなる街づくりをしてください』

Facebookに東京で働く青年から届いた「市長、いつかきっと帰りたくなる街づくりをしてください」というメッセージ。淡路島の人たちは、ほとんど島外に出て帰ってこない(これない)現状への切実な願いだったと思う、と門氏は言います。実際はもっと長文だったそうですが、このフレーズが気に入り、本人に承諾を得て、市のスローガンとして掲げたそうです。「このスローガンには3つの意味があります。市民・住民にとっての安心・安全な街づくり。島外在住者が帰ってきたくなる街づくり。そして最後は、観光で訪れてくれた人たちがまたきたくなる街づくり。それを踏まえて地域経営をしていくのが淡路市の考え方です」と話すように、これまでさまざまな取り組みを行ってこられました。

自分たちで地域経営をするには、“合併”はやむをえないもの

市長が語る『淡路市の地域経営』

観光はもちろん、移住先としても人気を集めている淡路島。そんな島の入り口にある淡路市は、2005年4月、津名郡5町(淡路町・北淡町・東浦町・一宮町・津名町)が合併して誕生しました。“合併”はやむなくしていくもの。初代市長である門氏は言います。「行政は民間企業と違い、財務破綻をしても潰れることはありません。しかし、自分たちで事業をしていくことができなくなる。させてもらえなくなるのです」。自分たちで事業をするためには国の許可とお金が必要。しかし、合併時の淡路市は財政破綻した夕張市と同じような財政状況だったため、自分たちで事業をすることはできませんでした。だったら、自分たちでできるようにしよう。合併は、そのための選択だったといいます。

合併以降、財政改革を実施。その結果、基金(預金)は2倍超、起債(借金)は約半分に。これにより、淡路市は一定の評価を得るとともに、一定の財政を確保。自力での事業ができるようになりました。

安定した財政と一定の人口を確保するための『企業誘致』

合併当時、5万1000人だった淡路市の人口は、現在4万4000人。淡路島全体でも、一番多いときに比べると10万人ほど人口は減っているそうですが、「現場の行政は、人口比率としてどういうサービスを行っていくか、ということだと思います。その人口に合わせた行政サービスをしていけばいい」と、門氏は言います。ただ、市の整備には安定した財政が必須。そのためにも『一定のバランスある人口』を確保しなければいけません。そこで、淡路市が力を入れているのが『企業誘致』です。現在までに、市外から21社を誘致。約300人ほどの雇用が生まれています。「市内企業も合わせると計46社。これは近畿圏では断トツ。日本全国で見ても、これだけの田舎で、これだけの実績が上がっているところは少ない」といいます。

財政的に大きな負担があっても、一定の地域運営を優先

企業誘致の際に大事にしているのが、どうアピールするか。「廃校した中学校の跡地に誘致したある企業は、他県でほぼ契約が決まりかけていました。決断を前に役員の方々が現地に視察にきてくれた際、用地も建物も無償でお貸しします、と伝えました。建物を処分するのに約2億円の費用がかかるけど、用地は1億円にもならない。だったら、無償貸与することで産業や雇用が生まれる方を選択しよう、と」。結果、淡路市が選ばれました。

企業だけではなく、病院も誘致。その際、特定の医療法人には助成ができなかったため、社会福祉法人として整備できるよう、土地を無償貸与(一部分は賃貸)。建物建設に補助まで出したそうです。「財政的に厳しい淡路市にとっては大きな負担でしたが、これによって地域の医療を確保することができました」。

市長が語る『淡路市の地域経営』

「無償貸与には地元の反対が必ずあります。何にも使わず、そのまま放っておいたとしても。しかし、それを突破していくことは行政にも必要」と意思を貫き通し、結果的に地元で勤めようという若者も 増加。「企業を誘致することで、島内に働く場所ができる。働く場所ができると、そこに生活が生まれる。そうすることで、一定の地域運営ができるのです」と話します。他にも、若者に人気の『野島スコーラ』や、人気の単位制高校『AIE国際高等学校(旧洲本実業高等学校東浦校)』など、さまざまなカタチの企業誘致を行っています。

自分たちでできないなら、民間にやってもらえる環境整備を

門氏は、民間活力による事業展開も有効利用されています。「淡路市は株式会社、という考え方。得た税金を順調に運用するだけでは、地域の活性化にはつながりません」。市の行政は実行部隊。自分たちの力でできることを、できる範囲で実行していくことが必要だ、と。しかし、「残念ながら、地元だけではこれだけのことはできません。でも、できないなら外から呼んでくればいい。自分たちの力でできないことは、民間の人にやってもらえるよう環境を整備する。それも現場の行政の仕事なのです」と。

最後に門氏は学生たちにこう伝えました。
「自分たちができる範囲でどう市町村経営をしていくか。市の行政というのは、市民と一緒になってサービスを行っていく部隊です。田舎であっても、利用できるものはたくさんあります。国や県ではできないことが、地域行政の現場では工夫によっていろいろできる。民間と地域行政は違うと思っている人も多いかもしれません。しかし、自分たちができることでどう展開していけるか。それは、民間も公共も同じなのです」。

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