『危機管理』の観点から、自分がどういう役割を果たしていくのか、を考えていく

『危機管理』の観点から、自分がどういう役割を果たしていくのか、を考えていく

公開日:2021年3月4日

特別講義

本学では毎週、日本を代表する各業界の企業のトップを講師に招き、特別講義を行っています。

12月16日(水)の講師は、日本医療安全調査機構専務理事・千葉大学客員教授の医学博士・矢島鉄也氏。元厚生労働省健康局長でもある矢島氏に、『新型コロナウィルス感染症に対する我が国の対応策の特徴と課題』というテーマでお話しいただきました。

「厚生労働省にいたころ、今回のようなことは将来起こりうるだろう、と何度も呼びかけていた」と話した矢島氏。そのため、日本は決して感染症対策において何もしていなかったわけではなく、厚労省ではこういったことが起こるということを念頭に置きながら、いろいろな対策をしてきたといいます。ただ、「世界的な傾向として、感染症に対する意識が低くなっていた」と。

感染症対策の基本的な考え方

海外で感染症が発生した場合、「島国の日本は、まず第一に『侵入を遅らせる』ということが大事」と矢島氏は言います。海外からの飛行機をシャットダウンしたり、あるいはオープンにするのであれば空港を限定し、症状がなくても検査をしたり。公共交通機関を使わないようにお願いしたり。しかし、これですべてブロックはできません。感染症には‟潜伏期間”があるため、どうしても検査をすり抜けてしまう例があるから、です。そこで、その間に行うのが『医療提供体制の強化』。侵入を遅らせている間に、医療機関の受け入れ体制を整えるのです。「それによって拡大を遅らせ、流行のピークの山をなるべくなだらかに抑え、医療機関への負担を減らす。医療機関が対応できる体制を作りつつ、経済活動もできるバランスを整えていく。これが基本的な戦略」だと、矢島氏は語ります。

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国連でも【持続可能な開発のための2030アジェンダ】が設定され、過去の世界的な感染症への反省の観点から『人間の安全保障』を具体化。日本としては、感染症危機時にさまざまな国際機関と連携し、迅速かつ効果的に対処できる仕組みが構築された社会、途上国の保健システムが感染症危機にも対応できるように強化・整備された国際社会づくりなどを目指します。矢島氏いわく、「感染症対策は、日本だけやってもだめ。国際社会が一丸となってやっていくことが大事」だと。

感染防止と経済活動の両立のためのアクション

感染防止対策を厳しくしすぎると、社会経済活動が難しくなります。逆に、社会経済活動を緩やかにすると、感染が広がってしまいます。このバランスをどうやってうまく取っていくのか。「国も悩みながら施策を進めている」と、矢島氏は言います。

2020年11月9日、国は『緊急提言』を発表しました。これは、新型コロナウィルス感染症が発生して初めて経験する冬場における、社会経済活動との両立のため、国民・自治体・国それぞれに求められる具体的な5つのアクションをまとめたもの。

ー緊急提言ー

〈アクション1〉今までよりも踏み込んだクラスター対応

〈アクション2〉対話のある情報発信

〈アクション3〉店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践

〈アクション4〉国際的な人の往来の再開に伴う取り組みの強化

〈アクション5〉感染対策検証のための遺伝子解析の推進

以上の5つのアクションを実施しても、“ステージⅢ相当以上”と国や自治体によって判断された場合には、「社会経済活動に一定の制約を求めるような強い対策を行う必要があることから、そうした事態を回避するためにも国民が一丸となって対策を進めていく必要がある」と矢島氏。また、感染リスクが高まる注意すべき『5つの場面』を挙げました。

  • 飲食を伴う懇親会
  • 大人数や長時間におよぶ飲食
  • マスクなしでの会話
  • 狭い空間での共同生活
  • 居場所の切り替わり

また、「寒い環境でも換気を実施し、同時に加湿をすることも大事」とも話しました。

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危機管理という観点から考えてほしい“3つの課題”

国民の生命・身体または財産に重大な被害を生じる(または生じる恐れがある)緊急の事態への対処および当該自体の発生の防止を『危機管理』といいます。緊急事態には、さまざまな分類があるなか、感染症もそれにあたり、日本では内閣危機管理監を中心に対処。関係部署を統括し、各省庁と施策を連携する、という体制が整っています。

この『危機管理』という話の流れから、矢島氏は学生たちに「将来、仕事に就いたときの危機管理という観点から考えてもらいたい」と、次の3つの課題を挙げました。

  1. 自分と家族を守るためにできる健康管理は何か?
  2. 職場の同僚を守るため、業務を継続するためにやるべきことは何か?
  3. 今後の職場危機管理で準備しておくことは何か?

そして最後に、矢島氏は「災害、災いは、忘れたころにやってくるから、決して侮ってはいけない。これからも世界規模の感染症は起こる、ということを念頭に置いて、自分がどういう役割を果たしていくのかを考えてほしい」と、学生に伝えました。

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