“推し活”のリスクを知りビジネスチャンスを探る「キャリアアップセミナー(マーケティング)」
公開日:2025年11月14日

10月25日(土)、「キャリアアップセミナー(マーケティング)~推し活で学ぶ! デジタル時代のファンマーケティング~」を開講。22名の学生が参加しました。
日本と韓国のアイドルマーケティングを学ぶ
9月に実施した「プロから学ぶビジネス企画編」に続く“マーケティング”の第2弾。
今回は、大手IT企業で活躍するセキュリティ教育・プロモーションの専門家・日野隆史氏を講師に迎え、アニメ・ゲーム・K-POPなど、“推し活”に直結するエンタメを題材に、デジタルマーケティングの最前線について学びました。
マーケティングの過去・現在・未来
第1部は、日野氏による「アイドルマーケティングの進化と展望」をテーマにした講義が行われました。日野氏はまず、日本と韓国それぞれのアイドルマーケティングの主要な手法、起源と背景、核心概念と原則について紹介。また、それぞれが直面している課題および両者の共通課題を挙げました。それを踏まえて、日本と韓国のアイドルマーケティングの未来の動向について説明。「両者のマーケティング戦略は進化し続けている」としながらも、今後のアイドル業界に求められる戦略やアプローチについて言及されました。
“推し活”中の学生2名が語る“リスク”とは?
続いて、実際に今“推し活”をしている、という参加学生2名が登壇。
それぞれの「推し活」と「リスク」について発表しました。


ランドル萌菜さん(人間社会学部観光学科3年)は、自身の推しである韓国の女性グループについて紹介するとともに、K-POPにおいて”バズる”ことで起こりうるリスクの具体例を3つ紹介。ストーカー行為や空港での混雑など安全面の課題、過度な美意識の要求による健康被害、熱愛報道時の炎上や株価下落などを、実例を交えて説明しました。
一方、韓国の男性グループを推している坂田茉理奈さん(商学部経営学科3年)は、グループの基本情報や魅力を紹介したうえで、推し活を”する”側の3つのリスクを提示。チケットやグッズの価格高騰による金銭的な負担の増大、契約満了後の再契約問題による活動継続の不確実性、特典目当てのアルバム大量購入による環境問題です。これらの課題に対する解決案として、受注生産方式の導入、特典のデジタル化、不要アルバムのポイント回収制度などを提案しました。
実践ワーク:多角的な視点での課題抽出とアイデア創出
第2部では、「ブランド価値を最大化せよ!炎上とバズの境界線戦略」と題し、4つのチームに分かれてグループワーク。冒頭、日野氏よりワークの進め方と目的、ゴールについて説明されました。また、課題を多角的に捉えるための方法についてもアドバイス。
参加学生たちは、ここまで聞いた話を踏まえ、 “推し活”にまつわる課題の抽出と解決アイデアの創出に取り組みました。
学生たちの提案を評価。プラスαのためのアドバイスも
個々で課題を抽出した後は、チームで重点課題を1つ以上選定。その課題に基づいた解決アイデアについてチームでディスカッションし、模造紙にまとめていきました。


最後に、チームごとに「課題の背景・根拠」「解決アイデア」を発表しました。各チームからは、VRキャラクターやアニメーション化によるアイドルのスケジュール緩和とオンライン参加の実現、チケットやグッズへの学割制度の導入、本人確認の義務化による転売防止、そして推し活のルールを学ぶ教育コンテンツの開発とポイント制度の導入など、多様なアイデアが提案されました。
日野氏は各提案に対して、「視点がおもしろい」「実現性が高い」と評価する一方で、デジタル化に対して「リアルを求める人もいるので、そこを解決するソリューションが重要」と指摘。また、転売問題については「日本の事務所はすでに本人確認などの対策を取り始めているところもある」、健康問題については「アイドルとファンの両方の健康を考えた企画やプロモーションは非常に良い」とコメントしました。特に、推し活のルールを学ぶ教育コンテンツについては「コンテンツがほとんど存在せず、得点制度と組み合わせれば事務所も興味を持つはず」と高く評価。担当教員の新雅史准教授からも、ロックフェスが良いファン像を作ることで文化として定着した例を挙げ、「同じようにアイドル文化でも良いファン像を作り、発信していくことが重要」とアドバイスしました。
マーケティングの奥深さと楽しさに触れた1日
今回のセミナーでは、学生にとって身近な「推し活」をテーマにマーケティングを学ぶことに大きな意義がありました。自分自身が消費者(ファン)として実際に経験している活動だからこそ、チケット価格の高騰や環境問題といった課題をリアルに感じ取ることができ、「自分事」として深く考えることができました。また、ファン側の視点だけでなく、アイドルや事務所側が抱えるリスクにも目を向けることで、ビジネスを多角的に捉える視点を養うことができました。
業界の最前線で活躍する日野氏は、「困りごとを見つけ、解決策を考えることがマーケティングの本質」と説明し、学生たちは推し活という身近なテーマを通じて、まさにこのプロセスを体験しました。座学では理解しにくいマーケティングの考え方を、自分の経験と結びつけながら実践的に学べたことが、今回のセミナーの最大の成果と言えます。
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