「言葉が出てこない」瞬間から考える、自分の中のブレーキ
公開日:2026年7月10日

6月26日(金)、「公務員特別演習Ⅱ」の授業で、兵庫県立ピッコロ劇団団員の三坂賢二郎氏を講師に迎え、第3回となる演劇ワークショップを実施しました。
今年度3回目となる今回は、これまでのワークショップで扱ってきた身体表現や言語表現をさらに発展させ、「自己検閲」をテーマに、ワークを通して言葉と発想の関係について学びました。
思いついた言葉を、すぐ口にする難しさ
はじめに行われたのは、ペアになった学生が教室内にある机や椅子などを指さし、相手がその名称を答えるワークです。見たものをそのまま言葉にするため、学生たちは自然な流れで取り組みました。次に挑戦したのは、同じように指さされたものに対して、まったく関係のない言葉を返す課題です。簡単そうに見えて、いざ声に出そうとすると言葉が止まる。学生からは「ぱっと言葉が出てこなかった」という声も聞かれました。
三坂氏はこの反応について、「社会生活の中で、人は『言ってはいけない』というブレーキを無意識にかけています。自分自身で言葉を制限する『自己検閲』が働いていることを感じてほしい」と説明。思いついたことをすぐに口に出すことの難しさから、普段は気づきにくい心の働きに目を向けるきっかけとなりました。


直前の言葉に引っ張られる、人の自然な反応
続いて、一人が思いついた単語を発し、それに対して相手が関係のない単語を返すワークにも取り組みました。学生たちは、相手の言葉を聞いた直後に別の言葉を返そうとしますが、「直前に聞いた単語に影響されてしまう」と苦戦する様子も見られました。
三坂氏は、「人間は脳の表層にあるものや、直前に聞いたことを言ってしまうのが自然な反応です。間違えてしまうのも当たり前のこと」と話し、人が言葉を発する際の反応や思考の特徴について説明しました。
言葉を選ぶ、相手の反応を考える、場にふさわしい表現を探す。日常のコミュニケーションでは当たり前に行っていることも、ワークを通して見つめ直すと、自分の思考の癖や無意識の判断が浮かび上がってきます。
言葉が伝わらなくても
最後は、意味のない言葉を使って表現するワークに取り組みました。
2人1組となり、1人が異星人の営業マン役、もう1人が通訳役を担当しました。異星人の営業マンは、自分が持ってきた商品を意味のない言葉だけで説明します。通訳役は、その説明を聞きながら身振りや表情、話し方などから内容を推測し、商品の特徴や魅力を即興で伝えます。
最後には、2チームが参加者全員の前で実演を行いました。異星人の説明を受けて通訳役が次々と話を膨らませ、どのチームも息の合った売り込みを披露。予想外の商品説明や巧みな売り込みに会場からは笑いが起こったり、「なるほど」と納得する場面もあったりと、大いに盛り上がりました。
参加者たちは、言葉の意味がわからなくても、お互いの表情や身振りから意図を読み取りながらコミュニケーションを取ろうとする姿が印象的なワークとなりました。
公務員に求められる「伝える力」を考える
公務員の仕事では、地域の人々や関係機関など、さまざまな立場の人と関わります。相手に伝わる言葉を選ぶ力はもちろん、自分の考えを整理し、相手の言葉を受け止める姿勢も欠かせません。
今回のワークショップは、演劇の手法を用いながら、学生自身が言葉や発想のあり方を身体で確かめる内容となりました。学生たちは、声に出すこと、反応すること、間違えることを繰り返しながら、コミュニケーションにおける「自分の中のブレーキ」と向き合いました。









