芸能ニュースの“深イイ”裏テーマとは!? テレビの裏側に触れたプロデュース論

芸能ニュースの“深イイ”裏テーマとは!? テレビの裏側に触れたプロデュース論

公開日:2020年5月26日

プロデュース論

マスコミの第一線で活躍する講師を招き、新たな価値を生み出す力を学ぶ『プロデュース論』の第4回目となるオンライン講義を、5月21日(木)に行いました。

今回の講師は、朝の情報番組「おはよう朝日です」や「おはようコールABC」などのディレクターを経て、現在は朝日放送テレビ(株)報道局ニュース情報センターワイド制作部長を務める乾正氏。
「テレビの芸能ニュースはいる? いらない?」をテーマに、テレビ番組での芸能ニュースの裏に隠された思いや、番組制作において大切なことについてお話しされました。

芸能ニュースは“自分の生き方”を考えるきっかけ

情報番組において、有名な芸能人の活動情報や恋愛の噂などを取り扱う芸能ニュースコーナーは必要だ、と乾氏は熱弁。その理由は、芸能ニュースには“夢を与える”という裏テーマがあるから、だと言います。「気になる存在の情報はみんな知りたいと思っている。でも実は、それ以上に、芸能人の生き方や考え方を通して、見た人に自分の生き方を考えてもらいたいという思いがある」と。

プロデュース論

自分自身が感じた疑問や考えをSNSに投稿する芸能人は、影響力がある分、その言動一つひとつが批判の対象となりがちです。そんな現状に対して乾氏は、「全部わかっていないと自分の考えを世の中に対して言えないというのは息苦しいし窮屈。自分がおかしいと思ったことを表に出す勇気。自分が感じたなかでその感覚をどうやってみんなに発信していくか。そういった機会が多い芸能人を見て自分自身のことを考えてほしい」と言います。

プロデュース論

芸能人の生き方や考え方を通して自分の生き方を考える。その例として、この自粛期間に自身のインスタグラムに動画を投稿・コラボを呼びかけた星野源さん、自分が制作したひとつの絵本をきっかけにいろいろな才能・いろいろな応援の力を集め、つなげたキングコング・西野亮廣さん、乾氏が「自分がどれだけの人を勇気づけてきたかを自分なりにもわかっていて、応援してくれる人に最高のイメージをずっと持ち続けてもらうために引退を決めた」と話す安室奈美恵さんを紹介。こういった芸能人の活動を紹介する芸能ニュースは、見ている人たちに自分自身の生き方を考えるきっかけを与えることにつながっているのです。

時代とともに変化する『視聴者の感覚』を読み取る

ただ、と乾氏は言葉を続けます。「芸能人も一人の人間。プライバシーの問題はしっかり考えないといけない」と。芸能人のプライバシーについての考え方は、時代や時間経過によって大きく変わってきています。しかし、「それは芸能人本人だけではなく、テレビを見ている人の感覚も同じ。表現が過激になりすぎると見ている人は嫌な気持ちになってしまう。視聴者の感覚に合わせていくことが大事」だと。視聴者が少しでも不快感を覚えてしまうと、結果、伝えたいことが伝わらなくなってしまうのです。
この『見ている人の感覚を読み取る』ことは、情報の正確性と同じくらい、番組制作においては大切なこと、だといいます。

テレビ“を”楽しむから、テレビ“で”楽しむ時代に

その後、チャットに書き込まれた学生からの「テレビ離れが迫っているなか、どのようにテレビを見てもらう工夫をしているか?」との質問に答えた乾氏。答えはない、としながらも「テレビ“を”楽しむから、テレビ“で”楽しむに変わってきている。テレビを自分の生活のなかでどう使えばおもしろいか。テレビで楽しむという発想を自然とみんなしている。そういうシチュエーションを提供する、という発想でテレビを作ればまだまだ可能性はある」と回答。学生にも、テレビを自分の生活のなかでどのように使えば、より生活が豊かになるのか、考えてみてほしいと伝えました。

プロデュース論

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考え方は違って当たり前。正義で戦ってはいけない

長きにわたり、テレビの世界で生きてきた乾氏がずっと大切にしてきたこと。それは『議論』だと言います。議論を恐れない、その心の強さが大事、だと。「議論とは、お互いの考え方のキャッチボール。自分はこう考えている、あなたはどう考えていますか? というのを、相手がちゃんと受けられるボールで投げること。決して、相手を打ち負かそうと思ってはいけない。自分のボールで相手が怪我をしてしまったら、議論のラリーは終わってしまいます。議論の目的は、答えを導き出すこと。答えが出ないまま終わってしまったら、エネルギーと時間が無駄になる。考え方は違って当たり前。だからこそ、互いの考えの違いを理解して、そのなかで答えを見つけることが大事」だと乾氏は言います。そして、学生生活においてもいろいろな場面で必要になってくる、と前置きをしたうえで、「正義=その人にとっての正解、は人の数だけある。だからこそ、正義で戦うのではなく、考え方をキャッチボールすることが大切」と語りました。

大切なのは、“繰り返す”ではなく“積み重ねる”

そして最後に、生きていくうえで大切にしてほしいメッセージを、時間が許す限り、学生たちに伝えられました。

「感覚をアップデートする」
  • 情報も状況も刻一刻と変化している。常に自分の感覚をアップデートし続ける
「ワクワクする場所をさがす」
  • 自分のなかに力がないと人を助けることも幸せにすることもできない
  • 自分で自分のテンションを上げられることに一生懸命になってほしい
  • 仕事につながるかどうかは二の次でいい
「ドアはいつでも開いている」
  • 扉が開いていると気づけば、いろんな出会いやチャンスがある
  • ドアの向こうに求めたものがなかったとしても、別の何かが見つかるかもしれない
「わからないは素晴らしいこと」
  • わからないから新しいことが知りたくなるし、人との会話や興味が生まれる
  • 興味が生まれると一生懸命になれるものが見つかる
  • 普通の目線を持ち続けることが大事
「違いを認める」
  • 迷ったら正義感より良心で選ぶ
「おもしろがれる人になる」
  • これからは不透明な時代だからこそ、何事もおもしろがることが大事
「情熱とアイディアは平等」
  • 初めはテクニックなんてないから、そこだけを求めない
  • 自分にある情熱とアイディアを持ち続けること
「人に汗をかいてもらう」
  • 自分の情熱を語る→共感→人が汗をかいてくれる→頼れる仲間になっていく
「続けること」
  • 自分が一生懸命になることを続ける
  • “繰り返し”ではなく“積み重ね=アップデート”

乾氏は、まだまだ伝えたいことはある、としながらも「みんながどういう業界に進むかわからないけれど、自分の大好きなことを見つけて、それに自信を持って、それを続けて、積み重ねていってほしいと思います」と、講義を締めくくられました。

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