ちょっと演出がかった毎日の決まりごとが生み出す“自分らしさ”-プロデュース論-

ちょっと演出がかった毎日の決まりごとが生み出す“自分らしさ”-プロデュース論-

公開日:2020年6月22日

毎日放送(株)東京制作局チーフプロデューサー・林智也氏

さまざまなメディアの第一線で活躍する講師を招き、新たな価値を生み出す力を学ぶ『プロデュース論』。第7回目となるオンライン講義を、6月11日(木)に行いました。

今回お迎えしたのは、毎日放送(株)東京制作局チーフプロデューサー・林智也氏。ディレクター・チーフディレクターとして、関西ローカルの人気番組(『ちちんぷいぷい』『明石家電子台』『魔法のレストラン』など)を担当。その後、数多くの全国ネット番組を演出を手がけ、チーフプロデューサーとして『林先生の驚く初耳学』を経て、現在は『教えてもらう前と後』を担当されています。

入社以降、テレビ制作一筋の林氏が、この日の講義テーマに掲げたのは『1億人・総クリエイター時代の歩き方』。約20年にわたる自身の経験を通して、企画を通すコツ・ヒットを生むヒントについてお話しくださいました。

誰もが『クリエイター』として生きていく時代

誰もが『クリエイター』として生きていく時代

これからの時代、どのような仕事をするにしても求められるのが『クリエイティビティ』。一人ひとりがクリエイターとして生きていくためには、どのような意識や取り組みが必要なのでしょうか。林氏は『採用される企画を生むための考え方』について学生たちに話しました。

最初に挙げたキーワードは『魚のいる池で釣りをしなさい』。これは、昔、林氏がある有名人の方に言われた言葉だそうです。「視聴者がいる場所に釣り糸を垂らさないと意味がないよ、と。つまり、『自分の興味・関心』と『世間が求めるもの』が重なった企画を考えることが大事だということです」。

続いて話されたのは『自己演出』について。就職の面接などを行うこともある林氏は、「ほとんどの学生が同じようなことを言う。自分はこんなことを頑張ってきた、こんなことができる、と。でも、大切なのは、言葉で説明しなくても相手にそう思わせることができるかどうか。そういった自己演出ができることが重要」だと言います。

クリエイターへの第一歩は『インプット無限ループ』

以前、志村けんさんと2年ほどお仕事をされていた林氏は、そのインプットの無限ループにとにかく驚かされた、と言います。「無限インプットのコツって、“ちょっと変なインプット”をずっと続けること。そして、それを“人に言う”ことが大事。僕自身、25歳くらいのころに、どうも自分の人生は男っぽいな、と。でも、女性のことがわからないとテレビじゃ勝てないと思って、毎日女性誌を読むようにしたんです。最初は義務でやっていたけど、2~3年毎日読んでいると、いろいろな場面で思っていたより話が盛り上がるようになった」と体験談を語りました。

クリエイターへの第一歩は『インプット無限ループ』

最近は、お子さまのお弁当を作っているという林氏。「毎日やっているととんでもない効果を生むんですよね。こういった料理の回をやろうかとか、料理番組をするからブレーンで入ってくれないか、とか。いろいろと転がり出す」。無理をして毎日何かをするということではなく、楽しみながらできる連続インプットのようなこと。それを毎日積み重ねていくことがとても重要なのです。

蓄積の先に自分らしいコミュニケーションが生まれる

林氏は学生たちに、「ぜひ、みなさんも毎日続けられそうだなと思うことを考えて、紙に書いてみてください」と提案。ポイントは、『毎日できる』『そんなに大変じゃない』『自分のキャラクターとは少し違う』こと。自分はこんなタイプだから、こんなことを続けていたらおもしろいかな、会話が変わってくるかな、ということを想像して書いてみてほしい、と。それが、結果的に自己演出へもつながっていく、と話されました。

自発的に挙手で発表した何名かの学生の『毎日続けていること』『これから毎日できそうなこと』を聞いた林氏は、より効果的なコミュニケーションにつながる具体的なアイデアを伝授。その後、「蓄積していくことでスキルがつく、ということを言いたいわけじゃない。ちょっと演出がかった毎日の決まりごとを続けると、それが自分らしいコミュニケーションや渦を生んで楽しくなる」と、今回学生に勧めた理由を伝えました。20年近くテレビ業界で仕事をしてくるなかで、これで会話や企画の軸を作っていくことがとても多かったから、と。

Can・Want・Should・Are・Wereから“Will”を知る

続いて、学生たちにあるスプレッドシートを公開。その表には、真ん中に空白があり、それを囲むように『Can(=何ができるか)』『Want(=何がしたいか)』『Should(=何をすべきか)』『Are(=何をしているか)』と『Were(=何をしてきたか)』を書き込むスペースが。これらすべてを整理していくことで、『Will(=自分の立ち位置)』が真ん中に見えてくる、といいます。まだ何がしたいか見つかっていない、できることも少ない、という人も多いかもしれません。でも、これをやっていくと自己分析になる、と。林氏自身、「たまに、今自分がどこにいて、どうするべきなのか、立ち位置がわからなくなることがある。相談するにも、自分が何を求めているのかがわからないとできない。そういうときに、よくここに立ち戻る」といいます。

Can・Want・Should・Are・Wereから‟Will”を知る

大事なのは、器(=才能)より“つながり力”

「才能をコップだとして、その大小はたいしたアドバンテージではない」と力説する林氏。この言葉には、林氏だからこその想いが。「学生時代、ずっとアメフトしかしてこなかったから(関西学院大学のアメフト部に所属。3度の日本一を経験)、クリエイターとしてのアドバンテージがあったわけではない。だから、今日話したことに気づくまで結構時間がかかったんですよね。みなさんには学生のうちにこれを知って、さっさと活躍してほしい」と笑いながら話されました。

金魚鉢のように大きく素敵な才能を持っていたとしても、常に受け身で待っているだけの人よりも、「コップはそんなに大きくないけれど、ものすごい情熱や熱意があって、自分からどんどんいろいろな人とつながっていける人の方が強い」と。林氏がこの講義で、そういう人になるためのヒントやコツを、学生たちに伝え続けてくれていました。

自分だけの”興奮の在処”を突き詰めていく

そして最後に、「大事なのは、器ではなく、自信を持って自分を表現し、人とつながっていけるかどうか。そのためにはおもしろい人間に見えないといけない。だから自己演出が必要で、そのためにインプットをしていくのです。そしてたまに、スプレッドシートで自分の現在地を確認して、自分と世間の興味・関心の円が重なる部分で自分が興奮するところがどこなのかを突き詰めていく。これは、テレビの仕事だけの話ではなく、みなさんの人生においても役立つことです」と改めてメッセージを送り、講義を締めくくりました。

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