動画から映画へ。企業・地域ブランディングの“今”を語る。-プロデュース論ー
公開日:2020年8月17日
7月9日(木)、11回目となる特別講義『プロデュース論』のオンライン講義を実施しました。
今回の講師は、本学の『プロデュース論』がスタートした2015年から講義を担当してくださっている、株式会社毎日新聞社ビジネス開発本部プロデューサーの猪狩淳一氏です。
記者としてさまざまな事件を担当した後、社内においていち早くデジタル対応に取り組み、多くの新規ビジネスを立ち上げてこられました。その間、同志社大学大学院にてNewsMLを使った記事作成システムも開発。現在は、映像による地域のブランディングに取り組んでいるそうです。
この日は、『地域・企業のブランディングと映像の力』についてお話しくださいました。
日本のメディア各社も次々にブランドスタジオを設立
猪狩氏は最初に、昨今増えている【ブランドスタジオ】について説明。ブランドスタジオとは、企業のブランディングを向上させるためのコンテンツをメディア自身が制作すること。「今まで広告代理店がしていた仕事の一部をメディアそのものがやってしまう」ことだそうです。ブランドスタジオの先駆者はアメリカのNYタイムズですが、その特性から日本のメディア各社も次々に設立しています。毎日新聞社でも、2019年に毎日放送と連携した『毎日ブランドスタジオ』をスタート。企業や地方の公共団体のブランディング動画(映像)の受託制作や地域映画のプロデュース、それに伴う資金調達の協力、海外への情報発信、JNN系ネットワークへの展開などを行なっています。
信頼を生むブランディングと企業ストーリー
ここから、いよいよ『ブランディング』についてのお話へ。「ブランディングのひとつの目的は、地域の人や消費者、取引先などに対して自社の商品・サービスを浸透させること」と話す猪狩氏。何をしているかがきちんと伝わることで信頼が生まれます。消費者や取引先、地域から信頼されるということは「経営基盤そのものの安定につながる。それが、ブランディングのひとつの流れ」だと。また、ブランディングされた企業で働くことは従業員のモチベーションアップにもつながります。実際のブランディング事例を紹介した猪狩氏は、「中途半端にやるのではなくトータルでブランドを発信していくことが大事」だと伝えました。
そこで今の時代欠かせないのが、動画。CMと違って発信しやすく拡散されやすいため、ニーズも高まっています。ほかにも特徴的な効果があるブランディングムービーの代表的な作品を紹介しながら、「企業名や商品名を連呼するわけではなく、きちんとしたストーリーがあって、その企業のブランドが伝わっていく。これは映像ならではの力だ」と話しました。
映画はブランディングに適したコンテンツ
一方で、動画制作から映画にシフト、特に地域のブランディングに力を入れているという猪狩氏。ブランディングムービーと映画にはそれぞれメリット・デメリットがあるとしたうえで、「よりハイクオリティでいいものを作って、いろんな人に見てもらうには、映画はいいコンテンツ」だと分析します。昔は、‟撮影協力”という形で地方が誘致活動を行っていましたが、各地にフィルムコミッションができたことで映画やドラマのロケ誘致が活発化。今ではロケ協力だけではなく、企画や製作委員会に自治体や地元企業が名を連ねている作品も多く撮られているそう。それによって、実際に映画が地域の訴求に大きく貢献した事例も。「エンドロールに名前が出れば全国から見てもらえる。ブランディングとしていいやり方かなと思っている」と、猪狩氏は手応えを感じています。
一番大事なことは、どんな仕事でも同じ
講義の最後に、自身が考えるプロデューサーの仕事を「プロフェッショナルを集めてチームを作ること。トラブルや摩擦、勘違い、ディスコミュニケーションをうまく調整していくこと」と話した猪狩氏。さらに、最も大事なこととして「責任を取ること」と言いました。責任は痛感するだけじゃなく、ちゃんと取ることが大事。それがプロデューサーの仕事だ、と。そして、「これはプロデューサーに限ったことではない」と前置きしたうえで、プロデューサーに必要な資質を『キャスティング力』『ロジスティック力』『情報収集力』『分析力』『やりきる力』と話されました。「このなかでも非常に重要なのが、エネルギッシュにやりきる力。どんな仕事でも、プロジェクトなんてうまくいくかどうか保証のない状態ではじめていくわけだから、最後はやはり熱い思いが大事になってくる」と、学生に伝えました。