西村ゼミが育てたワイン、一般販売に向けた新たな一歩。「猪名川ワインプロジェクト」
公開日:2026年7月28日

地域ならではの食や文化を観光資源として活かす「ガストロノミーツーリズム」をテーマに学ぶ、人間社会学部観光学科・西村典芳教授のゼミ。
2023年度から猪名川町と連携して取り組む「猪名川町ワインプロジェクト」は、ぶどうの栽培からワインの醸造、ブランドづくりまで学生自身が携わる実践型プロジェクトです。
もくじ
7月9日(木) 中間発表会

今年度も猪名川ワインプロジェクトに取り組む西村ゼミ。
ブドウ栽培からワイン醸造までを経験してきた学生たちは、今年、その先にある問いと向き合っています。
「このワインは、地域にどんな価値を生み出せるのか」
7月9日(木)には猪名川町役場の担当者を迎え、中間発表会を実施。これまでの調査や先行研究をもとに、地域活性化や地域ブランド形成、社会的価値という3つの視点から、「今後の可能性」と「課題」について提案・発表を行いました。
ワインづくりを通して見えてきた「地域の価値」
学生たちは、それぞれ異なるテーマから猪名川ワインプロジェクトを分析。しかし、その先に見つめていたのは、3チームとも”ワイン”ではなく“地域が持つ価値”でした。
① 地域活性化
「猪名川ワインプロジェクトを活用した地域活性化の可能性」をテーマに発表したチームは、ワインづくりを人と地域をつなぐ交流の場として分析。地域への愛着や誇りを育む取り組みであると考察するとともに、認知度向上に向けたSNS活用や体験型イベントの充実を提案しました。
② 地域ブランド
続いて、「猪名川ワインを地域ブランドへ」をテーマに発表したチームは、協力農家へのインタビューなどをもとに、地域ブランド形成には人とのつながりや地域への愛着が欠かせないと分析。さらに、シュレッダー紙を活用した環境配慮型の栽培にも着目。「環境にやさしいワイン」という新たな価値や、住民・行政・大学が一体となってブランドを育てていく仕組みを提案しました。


③ 社会的価値
最後は、「猪名川ワインプロジェクトの社会的価値」をテーマに発表したチーム。地域住民へのインタビューをもとに、売上だけでは測れない”人とのつながり”や”生きがい”といった社会的価値に着目しました。ワインづくりそのものではなく、住民・大学・地域が協働するプロセスに価値があるとして、「プロセスのブランド化」という独自の考え方を提案。今後は、お酒を飲まない人も楽しめる加工食品やスイーツの開発、ガストロノミーツーリズムとの連携など、新たな展開を目指すとしました。
西村教授は、「提案内容が格段にレベルアップしていました。先行研究を十分に活用しながら、自分たちの調査結果と結び付けた発表ができていました」と、学生たちの成長を評価しました。
この発表をうけ、今年度も「みどり戦略学生プロジェクト(農林水産省)」に応募しています。
地域ブランドは”商品”ではなく”人とのつながり”から生まれる
それぞれ異なるテーマから研究を進めた3チーム。しかし、その発表には一つの共通点がありました。それは、猪名川ワインの価値は「ワインそのもの」だけではなく、人と人、人と地域をつなぐ関係性のなかにあるということ。
商品としての価値だけではなく、地域への愛着や誇り、新たな交流、そして未来へ受け継がれるブランドづくりまで見据えた提案は、ワインづくりを通して学生たちがたどり着いた新たな視点でした。
今後は、今回の発表で得た意見をもとに研究をさらに深め、地域とともに育てるワインブランドの実現に向け、最終発表へと挑みます。
7月19日(日) 神戸空港にて試飲会実施
収穫ゼロに終わった1年目、試験醸造に挑んだ2年目を経て、3年目には100本を超えるワインの完成に成功。そして今年、そのワインは一般販売へ向けて新たな一歩を踏み出しました。
3年間育ててきたワインを、地域の外へ届ける
7月19日(日)には、神戸空港で試飲会とアンケート調査を実施しました。
会場で提供したのは、昨年度、町民公募によって「宙しずく」と名付けられた白ワイン。ラベルデザインも学生が担当し、地域と学生が一緒になってつくり上げた1本です。
今回の試飲会は、一般販売を前に消費者の声を集め、今後の商品づくりや情報発信につなげることを目的に開催されました。
「おいしい」の声が、次の挑戦への力に
試飲会を行ったのは神戸空港2階の展望デッキ。
気温は35度近くまで上がり、多くの来場者は車で空港を訪れていたため、試飲できる人は限られる厳しい条件でした。


それでも学生たちは、
「猪名川ワインの試飲会を行っています!」
「ぜひ飲んでみませんか?」
と笑顔で声を掛け続けます。
興味を持って立ち止まった人にはワインを手渡し、味の感想やアンケートへの協力を依頼。目標としていたアンケート回収数にも着実に近づいていきました。
試飲した人からは、「飲みやすくておいしい」という声も多く聞かれ、なかには「購入できますか?」と販売を希望する人も。学生たちが畑づくりから携わってきたワインが、地域の外で初めて消費者に受け入れられた瞬間でした。
アンケート調査から見えた新たな可能性
試飲会で実施したアンケートでは、57名から回答を得ることができ、回答者の約9割が「おいしい」「とてもおいしい」と評価。また、パッケージデザインについても約9割が「良い」「とても良い」と回答。さらに、「購入したい」と答えた人は約3分の2にのぼり、「スーパー」「道の駅」「百貨店で販売してほしい」といった声も寄せられました。なかには、「ミニボトルがあれば購入したい」といった具体的なアイデアも。こうした調査を通して、商品の改良や販売方法について考える新たなヒントも得ることができました。
地域資源を育て、価値として届ける
収穫ゼロから始まったワインづくり。
失敗も成功も積み重ねながら、「地域資源を育て、価値として届ける」ことを実践のなかで学んできた学生たち。さらに今回の試飲会を通して、「おいしい」と感じてもらうだけでなく、「どこで買いたいか」「価格をどう感じたか」など、商品が市場で受け入れられるために必要な視点も学びました。
今後はアンケート結果を分析しながら、地域と連携して商品づくりや情報発信をさらにブラッシュアップ。学生たちが育てた「宙しずく」が、猪名川町の新たな魅力として、より多くの人へ届く日が楽しみです。














